気象庁の気象警報・注意報が近々細分化される

2010年5月27日、すなわち今週の木曜日から、気象警報や注意報が細分化される。

気象庁 | 大雨や洪水などの気象警報・注意報の改善について

従来は、都道府県をいくつかに細分した区域を対象に気象警報・注意報を発表してきたが、今後は原則として個別の市町村を対象に発表することになる。発表地域は375から1777に増えて、よりきめ細かい警報や注意報が出せるようになるため、警報や注意報の空振りが減るとともに、警報と注意報が本当に重要な時にだけ発令される情報として受け止められるようになることが期待されている。

この変更は、防災情報としては改善であると言えるものの、その運用には問題点も指摘されている。

気象警報・注意報、発表きめ細かく…TVなど困惑
気象庁:市区町村単位の気象警報、TV・ラジオ速報せず 「情報量膨大で住民混乱」

新しい警報・注意報は、画面と時間の制約があるメディアで伝えるには情報量が多すぎるという問題がある。速報の中核を担うテレビでは、あまりに多くの情報を伝えようとすれば、放映中の番組との干渉がひどくなってしまう。またラジオでも大量情報の伝達は難しそうだ。それでもNHKは頑張ってすべての警報を伝える方針だそうだが、他の放送局では従来どおりの細分化しない情報を伝える局が多いようである。

この問題は最終的には、情報を伝達するメディアの革新によって解決するしか道はないだろう。防災情報は今後もずっと細分化の方向へ進んでいくことが明白なのだから、いよいよ既存の仕組みでは限界に達しつつあると考えるべきなのではないか。情報量の面から考えて、もはやテレビ・ラジオだけでは十分な情報を伝えきれない段階に入ったのである。

気象庁気象防災推進室は「ホームページなどで警報・注意報を確認できることを周知するほか、住民に気象防災情報を配信する自治体のメールサービスの普及も促したい」としている。

この問題の長期的な解決策は、インターネット技術の活用を通して、利用者個別の状況に応じた警報にアクセスできる仕組みを導入するしかないと思う。しかしもちろん、気象庁のウェブサイトで情報を提供すれば十分というものではない。もっと多くの人々に伝えるにはどうすればよいか。インターネット技術の大胆な活用について真剣に考える必要があるだろう。

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気象庁防災情報XMLフォーマットが決まる

5月15日に「気象庁防災情報XMLフォーマット」(Ver 1.0)が公表された。

気象庁とXMLコンソーシアム 「気象庁防災情報XMLフォーマット」(Ver.1.0)の仕様を策定

これは以前に気象情報とXMLという記事で紹介したもので、試案に対する意見も取り入れて今回は正式バージョンをリリースしたということになる。詳しい情報は気象庁防災情報XMLフォーマット 情報提供ページで入手できる。今のところ私には直接関係はないが、いくつか参考になりそうな資料があるので、これから細かいところも読んでみたい。

今回のポイントの一つは、


気象庁は、これまで、気象警報、津波警報、地震情報等、それぞれの防災情報毎に情報の性質・利用形態などを考慮し、それぞれの情報で個別の、気象庁独自の電文形式(フォーマット)を作成してきました。

という従来の方式では、今後の拡張性が乏しく発展が見込めないというところにあるだろう。これを一から全部XMLで作り直すことによって、拡張性が生まれて全体の見通しがよくなり、今後の高度サービス提供にもつながっていく。これが今回の仕様の最大の利点と言える。

ただ、それだけで終わってしまってはもったいない。XMLフォーマット化によって関連するソフトウェア開発費が安くなり、地方自治体や防災関係機関などが新たに利用を開始するなどして利用者が増加することが、このフォーマット策定の本当の成功と言えるだろう。そのためには、XML関係のツールを最大限に活用して、基盤となるシステムを安い価格で提供することが重要だと思う。オープンソース化なども考えられるだろうか?またシステム開発費だけではなく、情報利用料もなんとか安くならないものだろうか。。。

いずれにしろ、XMLフォーマットの採用によるコスト削減は、拡張性による高度サービス提供に並ぶキーポイントではないかと思う。

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気象情報とXML

広い意味で言えば、気象情報のXML化は、本ブログの主題とも関係あるトピックといえる。

気象庁とXMLコンソーシアム 気象情報をXML形式で提供するための仕様策定作業を開始

こうしたことをやるという話は以前にもちらっと聞いたこともあったが、推進することが本決まりになったようで、まずはめでたいことである。今の時代としては当然の動きだろう。このXMLが広く一般に公開されるのかは、この文章だけからはよくわからないが、気象庁(気象業務支援センター)からは電文形式データというのがすでに配信されているので、まずはこれの一部がXMLに置き換わるという話かもしれない。

全国版電文形式配信サービス

ただし、これをすべて無料で一般に配信してしまったらこのサービスの無料開放にもつながってしまうので、とりあえずそういうことはなさそうである。下記の文章にも、「行政機関、報道機関や民間の気象事業者等」が有効に活用するためのものという雰囲気が漂っている。

また、高度化された気象情報の提供にあたっては、行政機関、報道 機関や民間の気象事業者等において更に有効に活用して頂くためにも、利用者 における業務効率、システム効率や処理コストを考慮しなければなりません。
気象庁とXMLコンソーシアム 気象情報をXML形式で提供するための仕様策定作業を開始[PDF形式:159KB]

であれば、現在も電文形式配信サービスを受けている専門ユーザの手間が多少は減る(?)という程度で、それほど大きなインパクトはないだろう。

ただXMLデータの作成と配信がもはや技術的に難しくない以上、気象情報をネットから勝手に集めて配信するような人(もちろん私もその一人だが)はどうしても出てきてしまうので、いっそのこと気象庁がきちんとしたXMLデータを一般に広く配信してくれたほうが世のためになると思う。気象情報に対する人気は世界的に高いので、利用条件がゆるめであれば、例えば気象情報のウィジェット(ブログパーツ、ガジェットなど)は黙っていても山ほど開発されるはず。そうすれば、気象庁の警報などもより多くの人にリーチすることになり、防災上も望ましいということになるだろう。

ただそうなれば、気象業務支援センターと民間気象会社の仕事が減ってしまう(民業圧迫)という批判が出る可能性もある。国民に対して広く無料であるべき基本防災情報と、民間気象業務の継続のために有料であるべき付加価値気象情報とを、どこで切り分けるべきなのか。私にはこの問題に対する明確な解答はないけれども、その境界線はインターネットの発達と普及によって徐々に動きつつあるのかもしれない。

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