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ひまわり8号に関する懇談会

静止気象衛星に関する懇談会の2回目の議事録が出ているようだ。

静止気象衛星に関する懇談会について

今回は民間事業者なども出席してもらい、相乗りの可能性、新たな利用の可能性を探るのが主な目的のようである。しかし、あんまり明るい話題はないようだ。いくつか話題を抜き出してみると、

  • 気象衛星画像だけで商品価値が生まれるものではない。
  • もしも有料化されれば使われなくなる。
  • 単体の衛星データだけでなく様々な衛星や航空機等のデータを総合して初めて利用者に満足されるサービスを提供できているのが現状である。
  • 技術的に使えることとマーケットができてビジネスとして成立するかどうかは別ものである。

というように、有料化への反対意見ばかりが述べられている。そして「主な意見」にある以下のやり取りが、有料化への望みの薄さを象徴しているかのようである。

委員:数ある日本の衛星の中で気象衛星「ひまわり」ほど多くの国民に見られているものはなく、これほど公共的に使われているにもかかわらず、気象衛星だけでは民業として儲からないというのは何故か?
事業者:気象衛星は毎日の天気予報で使っているが、それは気象衛星のデータが無償で提供されることによって安価な気象情報を提供できるからこそ使われているのが実情である。気象衛星データだけでは自治体も含めてビジネス・マーケットにはならない。

このようなやり取りは、なんとなくインターネットの歴史的事情を思い起こさせる。インターネットの世界でも、昔から無料での情報共有が当たり前となっていて、その前提でいろいろなサービスが発展してしまっていたので、その世界に有料のサービスを持ち込むのは非常に難しかった。「データには価値があるのだから有料にします」と宣言しても、「じゃぁ使いません」と言われるだけで、多くのビジネスが有料化に失敗して苦しんできた。もともと有料のサービスで、そこにしかないデータがあれば有料モデルでもやっていけるかもしれないが、もともと無料のサービスで、しかもそこにしかないわけでもないデータを有料にするのはなかなか難しいのである。

インターネットの世界でお金が動くようになったのは、データの販売よりもむしろGoogleの広告モデルが大きなきっかけとなった(広告モデル自体を考え出したのはGoogleではなかったのだが)(*1)。データにお金を払うよりも、広告にお金を払う方が、ずっとお金は動きやすかった。これを見てインターネットの世界では、有料サービスに見切りをつけて、無料化+広告モデルに頼るビジネスにシフトする動きも出てきている。会員への特別サービスやコンテンツの販売をビジネスにしているサービスもあるが、それとてデータそのものに価値があるというよりは、それによってユーザに高いレベルの体験を提供できることがむしろ大きな付加価値となっている。

このような動きを考えれば、もともとタダだったデータをむりやり有料化して利用者を減らすよりは、何か別の道を探った方がよいような気がする。

例えば、そもそも衛星の価格はどのくらいなのだろうか。ひまわり8号の価格がどのくらいになるのかはわからないが、気象衛星に関連する費用は、過去の例ではだいたい一機あたり200億円ぐらいになるようである。これで5年から7年使えるので、だいたい年間で40億円から30億円程度。となると、日本人が一人当たり年間約30円(あるいは月に3円)を負担すれば、ひまわりを維持することができる。つまり、このところ一生懸命議論しているのは、ひまわりを維持するために日本人が毎月数円を払えるかどうか、というレベルの議論ということになる。。。

決して小さくない金額ではあるが、なんとかならないものか、と思う。この件はまた考えてみたい。

(*1)電子商取引等での物品購入によるお金の動きは、物品に対する対価が必要なことは当然なのでここでは考えていない。もともと無料だったものからどうやってお金を取るのかという点をここでは問題にしている。

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