来月にも本格運用
ネット上では記事が見つからないのだが、日経新聞2005年5月15日朝刊(社会面)に、ひまわり6号の記事が登場した。
ひまわり6号 来月にも本格運用 機能確認試験が順調とな国土交通省・気象庁の運輸多目的衛星「ひまわり6号」の機能確認試験が、大きなトラブルも無く進んでいる。気象観測機能の本格運用は、準備に万全を期し、当初予定の五月末から六月にずれ込む見通しだが、同庁は「梅雨の終わりごろまでには間に合わせたい」としている。
(以下略)
地上側の機器設定に手間取っているとのことだが、これはおそらく、今回から気象衛星と地上の間の通信方式を大幅に刷新することが響いているのではないだろうか。
新聞記事にもあるように、ひまわり6号は約1億3千万画素と、ひまわり5号の約8400万画素から大幅に解像度がアップする。また画素数ばかりでなく画像の階調についても、6~8ビットから10ビットへと向上する。これは、最近の高級デジタルカメラに標準装備となりつつあるRAWモードのように、標準的な256階調(8ビット)よりもさらに細かい階調を記録できるようになるという、目立たないけれども重要な改善なのである。
しかし高級デジカメでRAWモード撮影すれば小さなメモリがすぐに埋まってしまうように、「ひまわり6号」の画像データも「ひまわり5号」に比べてサイズが大きく膨らんでしまうこととなった。これまでの気象衛星と地上の通信方式では、この大きな画像データをもはや地上に送りきれない。そこで今回は新しい通信方式を導入し、高精細の画像も高速に伝送できるように変更する(*1)。
しかし古いフォーマットもすぐには捨てられないため、しばらくの間は新旧のフォーマットが混在して、複雑な運用が要求されるようになる。そのあたりのソフトウェア的調整に手間取っているのではないか、というのが私の想像である。また、気象衛星データの全体的な処理系も10ビット対応へと入れ替える必要がありそうで、もしかするとここも手間取るのかも。
「梅雨の終わりごろに間に合わせる」という発言からは、来月といっても早くとも後半ぐらいの運用開始を念頭に置いているような雰囲気が伝わってくる。当初予定よりも1ヶ月遅れといった感じかな。
(*1) 旧方式(ひまわり5号のMDUS向けS-VISSRデータ伝送速度)は660kbpsなのに比べ、新方式(ひまわり6号のMDUS向けHRITデータ伝送速度)は3.5Mbpsへと、従来比5倍以上の高速化を達成している。現状はおおよそADSL並みの速度といったところか。
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