もう一つの目的
今回の種子島行きには、ロケット打ち上げを見るだけではない、もう一つの目的があった。その目的とは、現場からのリアルタイム情報発信を体験し情報システムの設計に活かす、というものである。何だそれ?という感じだが、その背景をこれから説明していこう(長文注意)。
私の仕事の一つに、台風情報を提供するデジタル台風というサイトの運営がある。このサイトの主な目的は、気象衛星画像のように宇宙から見るマクロな視点に基づく台風情報を提供することにある。しかしこのサイトを運営しながら感じたことは、現場からのレポートのように地面からみたミクロでリアルな視点がないと、マクロな情報は実感をもって伝わらないのではないか、ということだった。
そこで、トラックバックで台風情報を収集する台風への眼というサイトを立ち上げ、災害現場などの現地からのリアルタイムな情報発信を収集することにした。そして実際に、実感あふれるレポートが少しずつ集まるようになったが、私はこれまで当事者ではなかった。台風接近あるいは災害発生という忙殺される時間帯に他人にむけて情報を発信するという行為は、果たして現実的なものなのだろうか。
そんな疑問を解決するために、ロケット打ち上げというリアルタイム性が要求されるイベントの中に自らの身を置いてみることで、必ずしも通信状況が良くない現場からリアルタイムに情報を発信する、という行為を擬似的に体験してみようと思い立った。旅立つ直前にこのウェブログを開設したのも、まさに現場からの中継ツールとして使うことが目的だったのである。
今回の旅行で利用した機器は、ノートパソコンLet's Note CF-R3、通信手段はb-mobileによるダイヤルアップ、およびNTT DocomoのPDC携帯電話によるダイヤルアップとi-modeによるメールである。まずb-mobileの通信状況は、種子島の3市町村中心部では問題なかったが、それ以外の場所では、竹崎付近を除いて基本的に使えなかった。打ち上げを眺めた最終目的地でも、最初のうちは少し通じていたのだが、途中から全く使えなくなり、最終的には使用を断念した。一方PDC携帯電話の方は、まず問題なくどこでも利用可能だった。以上の機器を利用して、いかなる場所にいるとしても、できるだけリアルタイムにココログから情報を発信する、というのが今回の任務の内容である。
その結果としてわかったことを以下にまとめる。
- カメラつきケータイはなんと言っても使いやすい。写真と短文という形式ならベスト。ただし、長文を打つのは時間がかかるため、メッセージは短くするに限る。もっとも私は、ケータイブラインドタッチができないのだが、、、
- ケータイに限らずメール送信方式がとにかく便利。低速の通信手段ではココログのウェブインタフェースは重く、非常に使いづらかった。カメラ入力からメール投稿をうまく連動させれば、ノートパソコンの使い勝手は必ずしもケータイに劣るものではないような気がする。
- 現場の状況を見ることと、文章を打ち込むこととは両立しがたい。画面を見ながら文章を打ち込んでいても、ロケットの方も気になるし、視覚的に気が散ることはなはだしい。これを解決できるのは音声入力だろうか。
いずれの点も特に新しい発見というわけではなく、これまで無縁だった私自身が初めて実感をもって理解できました、というに過ぎない。実際にやってみると、現場からの情報発信は簡単ではなく、見るべきものと考えるべきものがある中で、画面に向かって文章を打ち込んでいくことの難しさは、自分でも何となくわかってきた。
またもう一つ実感したことは、ノートパソコンもメール投稿にすれば(できれば)よかった、ということである。ノートパソコンの優位性は、なんといっても情報の編集が容易であるという点にある。画像のトリミングや加工もできるし、長文の推敲も容易である。これらの特長は、現場からの情報にある程度の正確さと簡潔さを与えるのに有効である。問題はすべての機器の連動がケータイほど洗練されていないことだが、これは十分に解決可能な問題だろう。それが解決できれば、私にとってノートパソコンは優れたモブログツールとなる。
音声入力についても、音声データのメールを送るとか、Podcastingとか、いろいろな試みがある。ただし音声データは一覧性および検索性で劣るため、自動あるいは手動でテキストに変換していく必要があろう。
もし次回のロケット打ち上げを見に行くことがあれば、今回の経験を活かし、もう少しリアルタイム性に優れたレポートを送信する訓練をしてみたいと思っている。今回はロケット打ち上げ時刻の18:25に対して、17:41~19:48という約2時間の空白が生まれている。これを短くすることで、現場からのリアルタイム情報発信という問題を、よりシビアに考えてみたいという気がする。
あ、そういえば、今年はMTSAT-2の打ち上げも予定されているんだっけ、、、
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