ひまわり8号がデビューしてから1か月が経った。ひまわり8号の性能の高さに興奮しつつも、そのポテンシャルを引き出すにはもっともっと研究が必要だとも感じた1か月であった。
ひまわり8号の正式運用は、予告通り、7月7日11時から始まった。
静止気象衛星「ひまわり8号」の運用開始日について
デジタル台風でも事前に準備を始めてはいたものの、日々多忙な中では運用開始日までに準備を終えることができず、ドタバタしながら初日を迎えてしまった。
とりあえず初日にスタートできたのは、デジタル台風:第三世代気象衛星「ひまわり8号」画像/動画である。「フルディスク/全球」「日本域」「機動観測域」の3領域に関して、最新24時間の動画を提供するサービスを開始した。全16バンド中8バンドを対象とし、加えてバンド3,2,1を組み合わせたRGB画像(トゥルーカラー画像)も提供している。将来的には過去の画像を検索する機能を提供したいと考えてはいるが、それが可能となるのはもう少し先のことで、しばらくは最新画像と最新動画のみが見られる状況となる。
次に、デジタル台風の画像データベースについても、運用開始日からひまわり8号への切り替えを行った。ただしこちらは、ひまわり7号と同様の1時間間隔の画像だけが対象であり、ひまわり8号の高い性能を活用できる状態になっていない。こうした理由は、画像の更新はいつ - ご意見・お問い合わせ・ご質問にも簡単にまとめた。将来的には、ひまわり8号に全面的に移行したいと考えてはいるが、具体的な作業プランはまだ見えていない。
さて、この1か月の取り組みで最も大きな話題となったのが、機動観測域を用いた「台風高頻度観測」の動画である。機動観測域とは、南北、東西とも約1000kmの範囲を選んで、2.5分ごとに観測を繰り返す機能である。観測場所を機動的に変更しながら高頻度観測できるため、台風を追跡して観測する用途に適している。台風の高頻度観測については、可視(バンド1)、可視カラー(バンド3,2,1)、赤外(バンド13)の3種類の動画を提供している。また、これまでに作った動画は台風高頻度観測で一覧できるようにした。
この動画がとにかく素晴らしい。2分半間隔まで撮影頻度を上げることにより、台風の雲の変化が本当に詳細に追跡できるようになった。2015年台風13号(ソウデロア|SOUDELOR)にも書いたように、この動画を見ると台風の発生から消滅までの変化が詳細に理解できる。特に台風発生時に雲がモクモクと湧き上がるダイナミックな様子は必見である。少し長めの動画ではあるが、ぜひじっくり眺めていただきたい。
可視 [B01]
可視カラー [B03, B02, B01]
赤外 [B13]
ちなみに、この動画を公開したFacebookページは、デジタル台風公式Facebookページ史上、最も多数の「いいね!」を獲得した。それほど、この動画は、みんなの心を捉えたのである。
このように、デビューから1か月、時間を見つけながらひまわり8号データに取り組んできたが、これでひまわり8号のポテンシャルを引き出せているかというと、正直まだまだというのが実感である。
まず、可視カラー画像、あるいは他のバンドを組み合わせた疑似カラー画像などについては、まだ未知の部分が大きい。例えば、地球観測衛星「ランドサット」を対象に蓄積された多くの知見などが「ひまわり8号」にも活かせると思われるが、これは今後の課題である。水蒸気画像などからも面白い情報が引き出せそうであるが、まだ全く手をつけていない。
また、ひまわり8号の画像解析についても、雲の動きの分析などから新しい発見が得られると予想されるが、そうした研究もこれからの課題である。ひまわり8号は特に時間解像度が素晴らしく向上したため、その分析からは多くの新しい知見が生まれてくる予感がある。そうした研究成果に私自身も貢献できるよう、頑張っていきたいと思う。
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