ひまわり9号打ち上げ成功!

H-IIAロケット31号機による「ひまわり9号」の打上げ結果について

静止気象衛星「ひまわり9号」は、11月2日(水)15時20分00秒(日本標準時)に、種子島宇宙センターからH-ⅡAロケット31号機により予定通り打上げられました。 ロケットは計画通り飛行し、打上げから27分51秒後の15時47分51秒に「ひまわり9号」を正常に分離したことが確認されました。 今後、衛星は自力で静止軌道に向けて飛行を続け、約10日後に静止化する見込みです。

JAXAの打上げ応援サイトで、打上げから分離までを見守った。私が11年前にひまわり6号の打上げを見たときと同じように、打上げ後間もなく雲に入ってしまったのが残念だったが、雲はまばらだったので、その後のロケットもみえたかもしれない。順調な打上げを実現した関係者の皆様方には感謝申し上げたい。

ひまわり8号、9号の運用計画にあるように、これから2028年までの気象観測はこの2機が担うことになる。ということは、次期気象衛星の打上げは2020年代後半、つまり今から10年以上後。今後しばらく静止気象衛星の打上げは見られないことになる。

またひまわり9号が実際に観測を始めるのは2022年ごろの予定で、それまではひまわり8号の万が一のトラブルに備えて待機するだけなので、天気予報の画像も当面の間はひまわり8号の画像が続くことになる。

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ひまわり8号の性能の高さに興奮した1か月

ひまわり8号がデビューしてから1か月が経った。ひまわり8号の性能の高さに興奮しつつも、そのポテンシャルを引き出すにはもっともっと研究が必要だとも感じた1か月であった。

ひまわり8号の正式運用は、予告通り、7月7日11時から始まった。

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静止気象衛星「ひまわり8号」の運用開始日について

デジタル台風でも事前に準備を始めてはいたものの、日々多忙な中では運用開始日までに準備を終えることができず、ドタバタしながら初日を迎えてしまった。

とりあえず初日にスタートできたのは、デジタル台風:第三世代気象衛星「ひまわり8号」画像/動画である。「フルディスク/全球」「日本域」「機動観測域」の3領域に関して、最新24時間の動画を提供するサービスを開始した。全16バンド中8バンドを対象とし、加えてバンド3,2,1を組み合わせたRGB画像(トゥルーカラー画像)も提供している。将来的には過去の画像を検索する機能を提供したいと考えてはいるが、それが可能となるのはもう少し先のことで、しばらくは最新画像と最新動画のみが見られる状況となる。

次に、デジタル台風の画像データベースについても、運用開始日からひまわり8号への切り替えを行った。ただしこちらは、ひまわり7号と同様の1時間間隔の画像だけが対象であり、ひまわり8号の高い性能を活用できる状態になっていない。こうした理由は、画像の更新はいつ - ご意見・お問い合わせ・ご質問にも簡単にまとめた。将来的には、ひまわり8号に全面的に移行したいと考えてはいるが、具体的な作業プランはまだ見えていない。

さて、この1か月の取り組みで最も大きな話題となったのが、機動観測域を用いた「台風高頻度観測」の動画である。機動観測域とは、南北、東西とも約1000kmの範囲を選んで、2.5分ごとに観測を繰り返す機能である。観測場所を機動的に変更しながら高頻度観測できるため、台風を追跡して観測する用途に適している。台風の高頻度観測については、可視(バンド1)、可視カラー(バンド3,2,1)、赤外(バンド13)の3種類の動画を提供している。また、これまでに作った動画は台風高頻度観測で一覧できるようにした。

この動画がとにかく素晴らしい。2分半間隔まで撮影頻度を上げることにより、台風の雲の変化が本当に詳細に追跡できるようになった。2015年台風13号(ソウデロア|SOUDELOR)にも書いたように、この動画を見ると台風の発生から消滅までの変化が詳細に理解できる。特に台風発生時に雲がモクモクと湧き上がるダイナミックな様子は必見である。少し長めの動画ではあるが、ぜひじっくり眺めていただきたい。

可視 [B01]
可視カラー [B03, B02, B01]
赤外 [B13]

ちなみに、この動画を公開したFacebookページは、デジタル台風公式Facebookページ史上、最も多数の「いいね!」を獲得した。それほど、この動画は、みんなの心を捉えたのである。

このように、デビューから1か月、時間を見つけながらひまわり8号データに取り組んできたが、これでひまわり8号のポテンシャルを引き出せているかというと、正直まだまだというのが実感である。

まず、可視カラー画像、あるいは他のバンドを組み合わせた疑似カラー画像などについては、まだ未知の部分が大きい。例えば、地球観測衛星「ランドサット」を対象に蓄積された多くの知見などが「ひまわり8号」にも活かせると思われるが、これは今後の課題である。水蒸気画像などからも面白い情報が引き出せそうであるが、まだ全く手をつけていない。

また、ひまわり8号の画像解析についても、雲の動きの分析などから新しい発見が得られると予想されるが、そうした研究もこれからの課題である。ひまわり8号は特に時間解像度が素晴らしく向上したため、その分析からは多くの新しい知見が生まれてくる予感がある。そうした研究成果に私自身も貢献できるよう、頑張っていきたいと思う。

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雲がヌルヌル動いていく「ひまわり8号」の素晴らしい映像

先日の「ひまわり8号」による初画像の公開では静止画しか公開されなかったひまわり8号であるが、ついに素晴らしい動画が公開された。

ひまわり8号のサンプル画像の公開について

ついに世界がひまわり8号の真価を目にする時が来たと言ってもよい。カラー化よりもなによりも、時間解像度が1ケタ上がることこそが、ひまわり8号の最大の価値だと私は考えるからである。

時間解像度が1ケタ上がるというのは、具体的には日本付近(あるいは指定した小領域)の観測頻度が、従来の30分間隔から2.5分間隔へと10倍以上に向上したことを指している。これによって初めて、我々は「雲がヌルヌル動いていく」動画を目にすることができるようになったのである。

私は一足先にこの感動を味わえたので、1か月ほど前のツイートにこう書いた。

つまりひまわり8号では、ある観測と次の観測の間での雲の動きが滑らかになったので、高度な補間をしなくても雲の動きが直感的に理解できるようになったのである。気象庁のページでは火山噴火の動画も面白いが、噴煙が風に流されつつ広がっていく様子は、小学生でもすぐに理解できるだろう。このインパクトは大きいと思う。

さて、ひまわり8号のデータをどうやってうまく活用していくか、それがこれから夏にかけての私の課題である。高頻度データをフル活用した見せ方をどうすればいいか、という楽しい課題がある一方で、この大量のデータをどう処理すればいいのか、という悩ましい課題もある。データを処理し提供する立場から見れば、ひまわり8号のデータに対処するには、ストレージや計算機についても従来より1ケタ上の能力が必要となる。それらをどうやって調達するのか、新世代気象衛星は新たな挑戦を突きつける存在でもあるのだ。

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「ひまわり8号」による初画像の公開

次期静止気象衛星「ひまわり8号」の初画像が公開された。

ひまわり8号による初画像

上記ページには、平成26年12月18日午前11時40分(日本時間)に撮影された画像が公開されている。バンド1からバンド16と、16個の波長で観測された地球の姿が公開された。第一印象を述べてみたい。

まず、今回の一つの目玉である「可視3バンド合成カラー画像」である。静止気象衛星としては「世界初」のカラー画像だからである。

まず、何と言っても地球の縁が美しい。地球大気が徐々に薄まって宇宙空間に溶け込んでいくグラデーションが、青く鮮やかに見えるようになった。まさに「地球は青かった」を実感させる美しさである。この部分は従来の可視画像では明確には見えなかった部分で、歴代の「ひまわり」画像で初めて、大気の厚さを実感できる画像と言える。

地球の縁の鮮やかさに比べて、それ以外の部分は現行のひまわり6号・7号とそう大きく変わらないような感じを受ける。もちろん色の変化は滑らかであるが、見える雲の詳細さが劇的に変わったという感じはしない。ただしその理由は、現在公開されている画像では、デジタル台風で公開する8192x8192の画像と空間解像度が大差ないからである。ひまわり8号の可視画像はもっと解像度が高いはずで、真の実力はそれを見てから判断したいところである。

一方、陸上部分はくすんだ感じで、オーストラリアの赤茶けた大地が印象的ではあるものの、全体的にコントラストが低く見えづらい。各種メディアに掲載された画像の中には、コントラストを上げて鮮やかになった画像もあるので、RGBの割り当てを変えたり、チャネルごとにコントラストを変えたり、画像化の際の設定を変更すればある程度は解決するかもしれない。とはいえ、陸域観測用のランドサットなどに比べると鮮やかさに欠けた地球という印象は否めず、やや期待外れというところだろうか。

最後に赤外画像については、空間解像度が2倍に向上した点はインパクトが大きい。より鮮明に雲が見えるようになった。

さて、次のお楽しみは、2分30秒間隔、あるいは30秒間隔でコマ撮りした動画である。雲が発達していく様子を鮮明に捉えた動画は、今回の初画像以上のインパクトを与えるかもしれない。期待して待つことにしよう。

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ひまわり8号の静止化完了

ひまわり8号が所定の静止軌道に投入されたことが発表された。

「ひまわり8号」の静止化の完了について
ひまわり8号、静止軌道へ投入

これでいよいよ、ひまわり8号の登場が近づいてきた。今後は準備状況を追跡していきたい。

さて、静止化を機に、一つご紹介。

ひまわり8号のプライムコントラクターである三菱電機のテレビCM「わたしもユーザーです2 静止気象衛星ひまわり篇」に、デジタル台風のデータを提供した。

三菱電機 from ME:広告/宣伝

このCMは、ひまわりのデータがアジアやオセアニアの各国でも利用されていることを伝えるもので、日本の国際貢献という観点では、ひまわりは気象分野における大きな国際貢献を果たしていると言える。

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ひまわり8号打ち上げ成功!

ひまわり8号の打ち上げが無事に成功した。
関係者の皆様、おめでとうございます。

これからひまわり8号が静止軌道に入って、すべての機器が順調に動いてくれれば、いよいよ次世代ひまわりの高性能センサーが威力を発揮する時がやってくる。来年の夏が楽しみである。

とはいえ、打ち上げプロジェクトはすんなり進んできたわけではなく、いくつかの難関を乗り越えてきた。以下に、ひまわり8号に関する関連記事を集めたので、経緯に興味のある方はお読みいただきたい。

ひまわり8号・9号計画

もちろん技術的な困難はいくつもあっただろうが、外からも見えた大きな波乱は、以下の2つの点である。

第一が、お金の問題である。ひまわり8号はそもそも当初は予算措置が危ぶまれており、打ち上げができないんじゃないかという危機感があった。それを取り上げた人気記事がひまわり8号に迫る危機である。最終的には2機分の予算が確保できたのでよかったが、ひまわりほど「元が取れている」衛星は他にないので、10年先の次々世代ひまわり10号・11号の際には、ぜひスムーズな予算措置をお願いしたいところである。

第二が、PFIの問題である。今回のひまわりは、衛星の運用管理を民間に任せるというPFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)構想が一つの目玉となっていた(参考:内閣府 民間資金等活用事業推進室(PFI推進室)ホームページ)。そして今回のひまわりがこの分野では初のPFI案件だったことから、注目度は高く各社が受注競争にしのぎを削った。ところがこの受注競争は、意外な結末を迎えることとなる。それをまとめた記事が「ひまわり」運用事業入札に関するスカパーJSATの苦情申し立ては却下である。こうした紆余曲折を経て、今回のPFI事業は気象衛星ひまわり運用事業株式会社が担当することに決定した。

ひまわり8号と、2016年に打ち上げ予定のひまわり9号が、今後15年間の日本の気象衛星観測を担っていくことになる。災害が多発する日本だけでなく、ひまわりのデータはアジアやオセアニアなど多くの国々でも活用されている。次世代ひまわりに対する期待は大きく、ぜひ期待に応えてほしいものである。

なお、ひまわり8号の運用に伴って引退するひまわり6号も紆余曲折の多かった衛星である。そちらの経緯は歴代の静止気象衛星:ひまわり・ゴーズ・GMS・MTSAT・Himawariのページに簡単にまとめてある。またこのページには、ひまわり8号に関する内容もいくらか追加した。興味のある方は参照いただきたい。

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ひまわり8号は予定通り打ち上げの見通し

種子島には台風18号が接近しているところだが、気象衛星ひまわり8号の打ち上げ日は変更なく、当初予定通り10月7日午後(14:16~18:16)のようである。

sorae.jp

いよいよ来週に迫ってきたひまわり8号の打ち上げ。応援サイトがすでに立ち上がっている。

ひまわり8号/H-IIA25号機 打ち上げ応援サイト | ファン!ファン!JAXA!

この週末に島への移動を考えていた人々にとっては、台風による交通の混乱は災難であるが、打ち上げ当日は台風一過の晴天となってほしいものである。

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ひまわり8号の打ち上げ日が決定 - 2014年10月7日

ひまわり8号の打上げ予定日が、10月7日に決定した。
ひまわり8号の打上げ予定日の決定について

ひまわり8号は現在のひまわり6号、7号と比べ、多くの面ではるかに優れた性能を持っている。
新しい静止気象衛星-ひまわり8号・9号 - 気象庁

デジタル台風なども、ひまわり8号に対応してより強力な(?)サイトになる予定だが、具体的にどう対応するかはまだあまり決めていない。
デジタル台風

ひまわり8号は、ひまわり9号とペアになって、今後15年間の観測を担っていくことになる。逆に言えば、今回のひまわり8号と次の9号の打ち上げを見逃せば、その後は約15年の間、ひまわりの打ち上げを見られないことになる。もちろん、H-ⅡAロケットによる打ち上げならもっと見る機会は多いのだが、「いや、ひまわりの打ち上げを見たいんだ」というこだわりがある人にとっては、これは見逃せない機会となる。

私も実はその一人で、このブログ自体が、そもそもひまわり6号の打ち上げ見学旅行から始まったものである。
打ち上げ画像(動画)

あれからもう9年半も経ったのかと思うと、時間が過ぎるのは早いなぁとつくづく感じる。そんな感傷的な気分にもなったので、3年ぶりにこのブログに記事を書いてみた。

これから打ち上げに向けて、随時情報を更新していきたい。というか、久しぶりに打上げを見に行きたい。

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ひまわり7号が復旧

ひまわり7号が復旧し、ひまわり6号は再度バックアップへ回る。

運輸多目的衛星「ひまわり7号」の気象観測に係る地上処理システムの復旧について

ネットワーク機器の故障とのことだが、これは事前に予測しがたい種類のトラブルだろうから、致し方ないなぁという感じである。ただし強いて理想を言えば、トラブル発生後に瞬時にバックアップ機に切り替わるような運用はできないのだろうか。次期のひまわり8号・9号ではそこにも期待したい。

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「ひまわり7号」の地上処理システムの異常

運輸多目的衛星「ひまわり7号」の地上処理システムに異常が発生し、昨年末以来久しぶりに、8月3日の昼から「ひまわり6号」が登場した。

運輸多目的衛星「ひまわり7号」の気象観測の地上処理システムの異常について

それほど大事なトラブルではなさそうなので回復を待ちたい。なお気象衛星の稼働期間の方も、今回の突然の交代も含めてデータを更新した。

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